紋谷幹男が、建築的印象をつぶやきながら、身近なお宮、お寺を散歩します。
第3273回 普門寺(ふもんじ)真言宗/山形県米沢市万世町桑山

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金属板葺き、八脚門形式の山門。







通り間から境内を望みます。



桑山観音堂。
置賜三十三観音霊場の第24番札所です。



有機的なフォルム。
金属板葺き、入母屋造屋根平入、
唐破風軒流三間向拝。
唐破風と書きましたが実体は丸屋根。
身舎屋根から膨らみ始め、
軒の手前で小さい円弧に収束します。
このような手仕事的意匠は、茅葺の見せ所で、
金属板に改修されても、
そのエッセンスが色濃く残っています。



向拝正面。



茨垂木。
妻壁には、大瓶束に龍の巻き付く彩色浮き彫。



唐獅子の頭貫木鼻。



端部の向拝柱には獏の頭貫木鼻。



身舎の外周には出桁軸組が回り、
そのラインに海老虹梁が掛かります。



身舎出隅上部。
二面に禅宗様頭貫木鼻、台輪木鼻。
尾垂木1本付きの二手先斗栱。
吹き寄せの蛇腹支輪。



苔むした参道の敷石。
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第3272回 普門院(ふもんいん)真言宗智山派/山形県米沢市関根

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茅葺、四脚門形式の山門。



境内側からの見返し。





正面見上げ。



円柱の本柱は冠木で止まり、
その上を頭貫、妻梁が掛かります。



山門から境内をみます。



あらら。
山形旅行二度目の本堂改修中です。
4年がかりで基礎の傾きを直したり、
茅葺の葺き替えをするそうです。
素晴らしい事ですが、
なにもこの時期とはなあ…と、長いため息。



逆に庫裏の方はは2019年(平成31年)に改修が終わっていて、
美しい屋根が堪能できます。



大きな入母屋造屋根に、
小さな千鳥破風が乗っています。
右端の簡素な切妻屋根との関係が、
バランス的に秀逸です。

白い漆喰、障子紙、
外壁の板張り、障子の腰板の限られた要素による、
平面構成も見逃せない面白みです。



大きな千鳥破風。
 
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第3271回 幸徳院(こうとくいん)真言宗豊山派/山形県米沢市笹野本町

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楼門形式の山門。



銅板葺き(旧茅葺)入母屋造屋根平入。
初層、上層とも桁行三間、梁間二間の三間楼門。



上層両サイドに花頭窓。



風変わりなことに、
正面壁面は若干下がっていて、
庇深さを確保しています。



組み物はなく、出桁と疎垂木の軒まわり。



通り間から境内を見ます。



笹野観音堂(ささのかんのんどう)。
天保14年1843)再建の米沢市指定文化財建造物。
置賜三十三観音の第19番です。



茅葺入母屋造屋根千鳥破風付き平入、
唐破風軒三間流向拝。
屋根構成は上記になりますが、
流向拝というより、
軒・棟高が一段下がった入母屋造屋根妻入屋根を、
正面に取り付けような造形になっています。
ユニークです。



正面。



妻面。
正面向拝が身舎と同じ間口なので、
向拝の妻虹梁が梁間の身舎柱に取り付いています。



充実の木彫装飾群。



鳳凰の懸魚彫刻。



向拝中央。
唐破風妻壁の「波上の鶴」と妻虹梁の唐草模様と、
龍の欄間彫刻が渾然一体になっています。



向拝左右間の龍の欄間彫刻。



向拝方柱上部。
側面獏、正面唐獅子の頭貫木鼻。
獏上に連れ三つ斗。



向拝を横から。



向拝中央柱上部。
虹梁等の横架材はなく、木鼻だけが正面を向いています。



手挟は「波に龍」の籠彫。



両端部には水平の虹梁が掛かり、
中央に菊花の笈型付き大瓶束が立ちます。



「五葉松に鷹」の籠彫の手挟。



身舎柱は円柱で、
台輪を挟み、尾垂木二本付きの三手先斗栱。



正面は波、側面菊花の籠彫の頭貫木鼻。
その上に台輪木鼻。





尾垂木二本付きの三手先斗栱
二軒の平行繫垂木。




身舎の正面軒まわり。



支輪板には「雲に鶴」の高彫。



場所ごとに意匠が変わります。



向拝空間。



身舎の向拝内側の吹き放ちの縁空間。
格天井張り。



身舎(左側)から向拝(右側)への屋根の切り替えし。

 
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第3270回 上杉神社(うえすぎじんじゃ)/山形県米沢市丸の内

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上杉謙信を祀る神社です。
大正8年(1919年)の大火で境内は全焼し、
伊東忠太の設計により現在に残る社殿が再建されました。



参道にある舞鶴橋に「毘」と「龍」の軍旗が翻ります。



神社は松が岬公園(米沢城址)に位置しますので、
境内へはお濠を渡ります。

普通の神社とは趣の異なる、
壮大なランドスケープ。



石敷きの直線の参道を進みます。



石造の一の鳥居。



素木造の二の鳥居。
ともに台輪鳥居形式。



神社門が現れます。



左右に菱格子の透塀をめぐらす
向かい唐門形式の神社門。



正面見上げ。





境内側から見返します。



唐門特有の輪垂木。



頭貫と妻虹梁間の大きな蟇股。



境内側には頭貫は掛かりません。



通り間から境内を見ます。
通り間だけが四半敷になっています。
正面に拝殿。



拝殿。



銅板葺き入母屋造屋根平入、三間流向拝。
伊東忠太の設計ですが、神社ということで、
抑えた堅実な全体構成。



向拝見上げ。



簡素な細部意匠。



外壁は板張り。
二軒の平行繫垂木。
身舎柱は円柱で、
四角い頭貫、桁の木鼻が重なります。









いかにも伊東忠太な、
背筋を伸ばした
モダンデザインの狛犬。
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第3269回 堂森善光寺(どうもりぜんこうじ)真言宗豊山派 /山形県米沢市万世町堂森

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二本組の石柱の奥に、
八脚門形式の仁王門。



通り間の先に阿弥陀堂が見えます。





古風で素朴な仁王像。



阿弥陀堂。
寛延3年(1750)の建立です。





銅板葺き入母屋造屋根平入、千鳥破風付き、
唐破風軒三間流向拝。
向拝と身舎の間口は同じですが、
身舎には出桁回りに柱が立ち、
屋根がその分広がり、向拝と縁が切れています。



正面。





妻壁には梅の透かし彫。



方柱の向拝柱上には唐獅子の頭貫木鼻。



出桁回りと向拝で、軸組が二重になり、
それぞれに虹梁が掛かります。
向拝虹梁は両端部が水平、
中央が円弧を描きます。



海老虹梁のような複雑さのない、
シンプルな円弧。



身舎正面の向拝下空間。



向拝虹梁が頭貫虹梁上に掛かる様子。



身舎から出桁への虹梁。
尾垂木1本付きの二手先斗栱。



身舎出隅上部。
粽付きの円柱二面に禅宗様頭貫木鼻、台輪木鼻。



鐘楼。
柱は末広がりで、そのまま袴腰に連続します。



 
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第3268回 大聖寺(だいしょうじ)真言宗智山派 /山形県東置賜郡高畠町亀岡・3

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観音堂。



銅板葺き入母屋造屋根平入、
唐破風軒流向拝。



三間向拝。



妻壁には中国故事の一場面。
ドラマチックです。



欄間も楽し気な中国故事の透かし彫。



中央には獏の頭貫木鼻。



向拝端部は正面唐獅子、側面象の頭貫木鼻。



身舎周囲に出桁が回り、
柱上に拳鼻付き平三つ斗下に彫刻蟇股。



彫刻蟇股。



正面軒まわり。



側面にも海老虹梁が掛かります。



海老虹梁と尾垂木2本付きの四手先斗栱の取り合い。
三段の蛇腹支輪。



牡丹の籠彫の手挟。







いい味の出ている狛犬。



大聖寺本坊山門。



簡素な薬医門形式。



本坊。



銅板葺き入母屋造屋根平入、
唐破風軒流向拝。
流向拝は身舎屋根の途中から起こされ、
結果的に、向拝と身舎の軒高さは揃っています。



見上げ。



海老虹梁。



 
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第3267回 大聖寺(だいしょうじ)真言宗智山派 /山形県東置賜郡高畠町亀岡・2

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亀岡文殊堂。
大正3年(1914)に伊東忠太の設計により建築。
米沢藩士伊東祐順の次男ということで
ご縁があったのでしょうか。



銅板葺き入母屋造屋根平入、正面千鳥破風、
3間唐破風軒流れ向拝。
〜明治前期までの棟梁による堂宇と、
明治後期〜の建築家による堂宇の比較は、
共に伝統建築がベースになっていても、
全体バランスに差異が生まれるのは、
興味深い事象です。

西洋様式建築も把握しつつ、日本建築のルーツを探り続けた
伊東忠太にとって、
大づかみな構成美が重要なようです。
短い大棟。→結果的に大きな妻面の千鳥破風。
同じく、バランス的に大きな千鳥破風や、
千鳥破風の端部に合わせた唐破風軒向拝など、
インパクトのある造形は、
筆者は妄想的に
アンドレーア・パッラーディオあたりの
明確な構成が連想されてしまいます。



正面。



端部の向拝柱上部。



中央の向拝柱上部。
側面に神社風頭貫木鼻、
大面取りの方柱上に出三つ斗。
その隙間に虹梁が差し込まれます。
棟梁はやらない割り切った納まり。



手挟。
伊東忠太は装飾のほうも独特で達者ですが、
ここでは抑え気味です。




妻面にも一間向拝が張り出されます。



縁空間。



身舎柱は円柱で、袖切が面白い虹梁が掛かります。



虹梁と木鼻。



側面向拝。



正面向拝下空間。

ここで一息。
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第3266回 大聖寺(だいしょうじ)真言宗智山派 /山形県東置賜郡高畠町亀岡・1

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白い壁に朱塗りの円柱が映える、
銅板葺き入母屋造屋根平入、
八脚門形式の山門。



通り間を貫通して真っすぐ参道が続いています。



斜めから。
屋根・軒まわりと外壁の色の、
強いコントラスト。



妻面。



朱塗りの円柱、明るい通り間は格天井張り。



正面唐獅子、側面象の頭貫木鼻。



定型スタイルは踏襲しつつ、
個性が発揮されます。





境内側の出隅には見返りの龍の頭貫木鼻。







支輪板、琵琶板には波様の高彫。
亀が泳いでいます。





土留めの石積で区画された石敷の直線参道。





石段で変化が生まれます。



様々な形態の石が絵心で組み合わされます。



途中に現れた鐘楼堂。
享保15年(1730)の建築です。



斜めから。
袴腰付銅板葺き入母屋造屋根平入。



見上げ。
二軒の平行繫垂木。





三手先の腰組。
反復する蛇腹支輪。




龍頭の尾垂木1本付きの四手先斗栱。





龍頭の隅尾垂木。

ここで一息。






 
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第3265回 安久津八幡神社(あくつはちまんじんじゃ) /山形県東置賜郡高畠町安久津・2

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石敷の参道の先に大きな堂宇が見えてきました。



舞楽殿を見返します。



最後の石段の向こうに茅葺屋根。



現れた威容に、息をのみます。
拝殿。
宝暦5(1755)年の再建、
茅葺入母屋造屋根平入、流向拝。




正面。



苔むした地面と屋根、背景の緑陰が溶け込んでいます。



千鳥破風と流向拝の曲面の蓑甲。



向拝を横から。
横板張りの壁面。



軒天と茅葺端部。



左本殿、小さな幣殿を挟んで右手に拝殿。
三間社流造の本殿は
宝暦5年(1755)に再建の県指定文化財。







拝殿の裏面。



本殿の屋根造形がユニーク。
棟の両端には鬼板があげられ、
屋根が半円形に張り出しています。
茅葺ならではの大胆で自在な造形。





拝殿の千木(ちぎ)。





本殿妻面。



二重虹梁の妻飾り。



透蟇股にあしらわれた鶴。



本殿梁間見上げ。



側面の縁側には舞良戸がたて込まれています。














 
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第3264回 安久津八幡神社(あくつはちまんじんじゃ) /山形県東置賜郡高畠町安久津・1

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長い直線の公道をまたいで大鳥居が立っています。
ここからは神社らしきものは一切見えません。



最初に優雅な三重塔が現れます。
伊達郡鳥取村、山口右源次義高を棟梁に、
寛政五年(1793)に着手、同九年(1797)に再建された、
県の指定文化財です。





初層、二層が二軒の平行繫垂木。
三層が二軒の扇垂木。



尾垂木1本付きの二手先斗栱。
中備は中央に蟇股、左右に逆蓮束。
支輪板には雲〜波模様の浮き彫。



唐獅子と象の頭貫木鼻。



尾垂木1本付きの二手先斗栱の先端には拳鼻。
 




さらに進み、二の鳥居をくぐります。



参道上に面白い堂宇が見えてきました。



舞楽殿。
室町末期の建築で、県の指定文化財です。

このように、直線の参道上をふさぐように
神楽殿が配される事例が、たまにあります。

ex諏訪大社下社秋宮、春宮、鶴岡八幡宮…。





こんな感じで参道空間が突き抜けます。



茅葺、宝形造屋根。
背面に茅葺の下屋が掛かります。



正面。



軒は1軒の疎垂木。
木鼻に古風な意匠が残っています。



かなり、改修が加えられてきたようです。



石敷きの参道を進みます。



乱形石がいい感じで組み合っています。





長年の風雪で丸みを帯た狛犬。
素朴な作風。



顔がとても良い出来。



「構え獅子」型も秀作。

ここで一息。
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